【臀部痛(お尻の痛み)】

お尻の痛みを臀部痛と言いますが、臀部痛は一言では説明しきれない程様々な原因が関わっています。

一つは腰痛です、腰痛の一部としてよくよく現れます。その他に仙腸関節や股関節などの関節、お尻にある筋肉や靭帯、坐骨や尾骨周囲の靭帯の障害などでお尻が痛くなります。さらにお尻の痛みは、腰の神経を傷めて発症する坐骨神経痛の部分的な痛み症状として現れることもしばしばあります。お尻が痛いときは、片側だけのこともありますが、両側に同時に起こることも稀にあります。

臀部痛の症状の現れ方

・歩く、または走るとお尻が痛む

・座るすぐに痛む、または長時間座ると痛む

・立ち上がり時に痛む

・お尻のストレッチすると痛む

・押されると痛む

・前屈すると痛む

臀部痛の場所から見える痛みの原因

臀部痛の場所や部位

【お尻の真ん中、中心部】
仙骨がある場所です。ここのお尻の痛みの多くは腰痛の一部として現れます。臀部痛の中でも、この部位の痛みは特によく見られます。仙骨は脊柱の一番下に位置する逆三角形の骨で、腰椎と尾骨の間にあります。ここに臀部痛が現れる場合、第5腰椎と仙骨の間にある椎間関節や椎間板の障害、仙骨表面にある多裂筋の緊張が原因として考えられます。仙骨自体の異常が臀部痛の原因となることはまれです。

【お尻の中心の少し外側】
仙腸関節のある部位です。仙腸関節は、お尻の真ん中にある仙骨と、骨盤の外側にある腸骨を結びつけている部位です。そこに不良姿勢などによるストレスがかかり、仙腸関節障害による臀部痛が発生します。この部位の臀部痛は、長時間の座位や立位、また急な腰の動作によって悪化することがあります。仙腸関節障害による痛みは、お尻の中心からやや外側に位置し、時として鼠径部の痛みを伴ったり、太もも、すね、ふくらはぎなどにも痛み、しびれが現れたりすることがあります。

【お尻の横の上部】
ここの外側には中殿筋と小殿筋、内側には大殿筋があります。中殿筋や小殿筋は、歩行時の骨盤の安定性に重要な役割を果たしています。姿勢の悪さや長時間の同一姿勢によってそれらの筋肉が疲労して、臀部痛が生じるようになります。また、筋肉以外の原因として、腰からお尻の横の上部向かって走る上殿皮神経が圧迫されて、お尻の横の上部に痛みを起こすことがあります。

【片側のお尻の真ん中あたり】
表面には大殿筋、その下には梨状筋があり、さらにその奥に股関節があります。梨状筋症候群や股関節障害で痛む場所です。梨状筋症候群は、ここの部位の痛みに加え、太ももの裏側、あるいはふくらはぎのほうにまで痛みやしびれを伴います。股関節障害がある場合は、立ち上がり動作の時や、股関節の屈伸動作、あぐらの格好をとるときなどにここに痛みが現れます。

【 お尻の横の下部で骨が出ているところ】
大腿骨が横に大きく張り出している大転子がある部位で、その表面には腸脛靭帯があります。この部位の臀部痛は、主に大転子滑液包炎が原因で発生します。ランニングやサイクリング、階段昇降などの繰り返し動作によって大転子と腸脛靭帯がこすれて引き起こされます。

【お尻の片側の下部】
坐骨結節という骨の出っ張りがあり、当たって痛みがでることがあります。この部位の臀部痛は、長時間座っていたり、硬い椅子に座ったりすることで悪化する傾向があります。坐骨結節周辺の筋肉や靭帯の炎症も、この部位の臀部痛の原因となります。坐骨結節のすぐ近くを通る坐骨神経や後大腿皮神経が圧迫されて痛みを起こすこともあります。

【お尻の中心の下部】
尾骨があり、尾骨部痛を起こすところで、強い不快感を伴うことがあります。尾骨は脊椎の最下部に位置し、座位や立ち上がり動作で特に負荷がかかります。尻もちなどの転倒や出産時のトラウマなどが原因で尾骨部痛が生じることもあります。骨盤底筋群の過度な緊張も尾骨部に臀部痛を起こす原因となります。

臀部痛(お尻の痛み)の原因とは?

【腰痛症】

お尻の痛みは腰痛症で起こることがよくあります。

主な原因は、第5腰椎と仙骨の間の椎間板や椎間関節の障害です。

また仙骨の表面にある多裂筋が硬くなって痛むこともあります。それらによって、お尻の真ん中に痛みが生じます。

【仙腸関節障害】
仙腸関節は、仙骨と腸骨の間の関節で、ごくわずかに動きます。猫背などの悪い姿勢で仙腸関節に負荷がかかり続けると、傷めて痛みが現れます。稀に鼠径部(あしの付け根)など、股関節周囲に痛みが起きることもあります。さらに、坐骨神経痛と似たような、太ももやすね、ふくらはぎに痛み・しびれを生じることがあります。これを仙腸関節障害あるいは、仙腸関節炎、仙腸関節痛などと言います。
仙腸関節障害はレントゲンでは判別できませんので、仙腸関節の周囲を押したり、動かしたりする検査により、仙腸関節が原因でお尻が痛いのかを診断します。
仙腸関節障害で起きるお尻の痛みは、病院によっては単に腰痛の一種として捉えてしまい、それ以上原因を追究せずに見逃されやすい症状です。

【股関節障害】

股関節にある軟骨や骨の障害で臀部痛が現れますが、その場所は、お尻の片側の中心部や上側、外側、下側にも広がることがあります。
股関節障害でも頻度が高い変形性股関節症とは、股関節の軟骨が加齢によってすり減り、臀部痛や足の付け根の痛み(鼡径部痛)、お尻の横の痛み、大腿部痛などを起こします。50代以降の女性に多く発症します。椅子から立ち上がる、歩くなどの動作でお尻が痛い場合が多いです。また、股関節の動きが悪くなります。足の開きが悪く、あぐらをかきにくい人は要注意です。

臀部痛を起こすその他の主な股関節障害は、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)や股関節唇損傷です。
大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI): 大腿骨頭や寛骨臼の形が生まれつきに悪く、股関節を動かした際に、ぶつかりあって痛みを生じる障害です。
股関節唇損傷: 運動などの繰り返し動作で、関節唇という股関節を安定化させる軟骨が切れてしまい、痛みを起こす障害です。

【梨状筋症候群】

梨状筋は殿筋の深いところあります。梨状筋症候群でお尻下部を中心とした痛みに加え、太ももや、ふくらはぎ、すねなどに痛みやしびれが広がります。
梨状筋症候群は、梨状筋が緊張して固くなったり、太くなったりして、その下を通る坐骨神経を絞めつけて起きます。足を組むなどの不良姿勢や長時間の座位で発症しやすいです。
また、スポーツも原因となります。同じ動作を繰り返すランニングやサイクリング、急激な動作を伴うサッカー、テニス、バスケットボールなどは、梨状筋症候群による臀部痛を引き起こすことがあります。

【中殿筋・小殿筋の筋肉痛】

中殿筋や小殿筋の筋肉痛は、お尻上部や、お尻の真横に現れます。
歩くとお尻の横が痛い場合、中殿筋や小殿筋の筋肉や腱が原因となっていることが意外と多くあります。それらの筋肉は、骨盤の姿勢を維持しようとして働くため、激しい運動のあとなどに臀部に痛みを起こすことがあります。

【大転子部滑液包炎】

大転子とはお尻の横の出っ張った骨のことで、大腿骨の一部です。大転子滑液包炎はここに痛みを起こします。発生機序としては、この大転子の上に覆い被さっていいる腸脛靭帯がランニングなどで繰り返し大転子と擦れることで滑液包が腫れて炎症を起こすとされています。痛みが強いと太ももの外側も痛くなり、歩く時に足を引きずるようになることもあります。

【坐骨結節痛】

座ったときに椅子に当たるお尻の下部の部分を坐骨結節といいます。
坐骨結節には、ハムストリングという太もも後面にある筋肉や大内転筋、下双子筋、大腿方形筋といった筋肉に加え、仙結節靭帯など、様々な組織が付いています。
デスクワークなどで、長時間硬い場所に座ると、慢性的な圧迫により、坐骨結節の表面にある滑液包という組織に炎症が生じて、坐骨結節滑液包炎による臀部痛を引き起こします。
また、スポーツで筋肉を酷使すると、坐骨結節付近の筋肉、腱に炎症を生じて痛むことがあります。

【尾骨痛】
尾骨痛は、患者さんがお尻の先が痛い、あるいはお尻の真ん中の下が痛いと訴えます。座ると尾骨が当たって痛みが出るので厄介です。
尾骨部痛の原因の一つは骨折ですが、激しく尻もちをついた場合に限られます。
一方、怪我をしていないのに、尾骨が痛み、困っている患者さんがたくさんいます。。
尾骨には、尾骨筋や骨盤底筋群の肛門挙筋などの筋肉や、様々な靭帯も付いているので、それらが尾骨に刺激を与えて痛みが生じていることがあります。それらに対する治療が効果的です。

お尻の痛みが坐骨神経痛の一部として現れる疾患

梨状筋症候群、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアは坐骨神経痛を起こす病気です。坐骨神経痛では、お尻から足にかけて広い範囲に痛みが出ますが、お尻が痛いのは、その部分的な症状にすぎません。痛みの元は腰椎にあったりします。

【腰部脊柱管狭窄症】

腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管の中心部や、脊柱管の出口付近が加齢現象で狭くなり、そこを通る坐骨神経が圧迫され、坐骨神経痛を起こす病気です。坐骨神経痛は、お尻が痛いだけでなく、太もも、ふくらはぎ、足の甲や足底に痛み、しびれを伴います。

【腰椎椎間板ヘルニア】
背骨には椎間板という軟骨が椎骨と椎骨の間にあります。椎間板が傷んで中身の軟らかい部分(髄核)が飛び出てしまうことを椎間板ヘルニアと言います。
腰椎椎間板ヘルニアによって腰の神経(坐骨神経)が障害を受けると、お尻、太ももの裏、足に痛みや痺れを感じます。その症状を坐骨神経痛といいます。多くの場合、悪い姿勢や前かがみの動作などで腰に負担をかけて腰椎椎間板ヘルニアが起こります。靴下をはく動作や、膝を伸ばしたまま床に座ることで臀部痛や足の症状が悪化します。